「音楽のパートナーとしてのコンピュータ」
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「シンセサイザーが弾きたい！」 僕とコンピュータの関わりは、実はそのへんから始まっている。 ＹＭＯの坂本竜一氏などの演奏を見て、 華麗にシンセサイザーを弾くプレイヤーにあこがれたのは、僕だけでなかろう。 幼い頃のけがで、右手の薬指の先を失っている僕には、 シンセサイザーを弾くためにピアノを習うことなど考えられなかった。 小学校のリコーダーに始まる楽器の数々・・。 手の不自由な僕にとっては、 リコーダーは穴がうまく押さえられず、ピアノの黒鍵はすべってしまうのである。 楽器というものが、僕にとっては、うまくあやつれないものなのだ、 と感じるのに時間はかからなかった。 そんな中、僕が知ったのが、 「シーケンサー」という機械、そして「シーケンサー・ソフト」である。 ＭＩＤＩというデジタル信号を使い、 あたかも人が演奏しているかのように、 シンセサイザーを自動的に演奏してしまう機械、シーケンサー。 さっそく、就職したての少ない給料で、コンピュータを買い、 ＹＭＯの坂本竜一氏が使用していたのと同じソフトを買いこんだ。 ほんの短いフレーズを何時間もかけ、 寝る間もおしみ、一つひとつの音符を数字化して、打ち込み、 やっと最初の作品ができあがった。 スタートボタンを押すと、 まるでへたなプレーヤーの演奏であったが、みごとにメロディーを奏でたのである。 とてもうれしく何度も繰り返して演奏させたのを覚えている。 その後のことはあまりくわしく述べないが、 コンピュータサウンズコンテストに応募して、 編曲部門で３位をいただいたことは、よい思い出となったし、 仕事におけるいろいろな場面で、 僕の打ち込んだ曲を耳にしている人も実は多くいたりするのである。 今、仕事が忙しくなり、 なかなか前のように時間をかけて打ち込みをする機会がないのが残念なのだが、 時間があると、コンピュータのスイッチを入れ、合奏を楽しむことがある。 一つひとつの音の世界を漂いながら、演奏をしていて感じるのである。 「コンピュータは、僕の音楽パートナーの一人だな」と。 1998.06.13 大分合同新聞掲載の原文 | ||